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米山香織・愛媛大特任准教授=愛媛大提供 拡大
米山香織・愛媛大特任准教授=愛媛大提供

 植物は地下の部分でコミュニケーションし、隣接する植物の存在を感知すると地上部分の成長を制御する--。愛媛大の米山香織・特任准教授(生命機能学)らのグループは、こうした可能性を示す研究に成功した。論文は米科学雑誌「カレント・バイオロジー」に掲載された。根から分泌されるユニークな植物ホルモン「ストリゴラクトン」の新たな機能として注目される。

 植物ホルモンは植物によって生み出され、植物の成長や発芽、開花などの促進や阻害などの作用を示す化合物の総称。今回、愛媛大と宇都宮大、英リーズ大の研究グループは地上部で植物の枝分かれを抑制する植物ホルモンとして知られるストリゴラクトンに着目した。

A イネの培養個体数が増えると1個体当たりのストリゴラクトン分泌量は減った B 培養液量が2倍になるとストリゴラクトン分泌量は2倍になり、培養液中の濃度は一定に保たれた。四角形の大きさは培養液量を表す=愛媛大提供 拡大
A イネの培養個体数が増えると1個体当たりのストリゴラクトン分泌量は減った B 培養液量が2倍になるとストリゴラクトン分泌量は2倍になり、培養液中の濃度は一定に保たれた。四角形の大きさは培養液量を表す=愛媛大提供

 ストリゴラクトンは化学的に不安定で、壊れやすいため、土壌中では生きている根の周りにしか存在しない。グループはまず、イネを1個体で培養しても、3個体で培養しても、水耕培養液中のストリゴラクトン濃度に変化はないことを確認した。個体数が増えると、イネは自分でそれを把握しているかのように個体当たりのストリゴラクトン分泌量を減らし、濃度を一定にしたことを突き止めた。

 次に個体数を変えずに、水耕培養液の量を2倍にしたところ、ストリゴラクトンの分泌量は2倍に増え、培養液中の濃度は一定に保たれた。

植物はストリゴラクトンを用いて隣接する植物の存在を感知し、枝分かれを抑制する。根寄生植物や、植物と共生するカビの仲間「アーバスキュラー菌根菌」にとっては、生きている根を感知するシグナルの役割を果たす=愛媛大提供 拡大
植物はストリゴラクトンを用いて隣接する植物の存在を感知し、枝分かれを抑制する。根寄生植物や、植物と共生するカビの仲間「アーバスキュラー菌根菌」にとっては、生きている根を感知するシグナルの役割を果たす=愛媛大提供

 グループはさらに、ストリゴラクトンを生産しないため過剰な地上部枝分かれを起こす生合成変異体のイネと野生型のイネを一緒に培養した。すると、生合成変異体のイネは野生型のイネが分泌したストリゴラクトンを積極的に吸収し、生合成変異体の地上部枝分かれが抑制される現象が認められた。一方、ストリゴラクトンを受け入れられない変異体は、野生型のイネと一緒に培養しても、枝分かれの抑制は起こらなかった。

 イネは根の周りに存在するストリゴラクトンを感知し、どのくらいのストリゴラクトンを自分で作って分泌すれば良いかを判断しながら、自身の枝分かれの度合いを決めているのではないか。研究結果から、グループはストリゴラクトンの機能をそう判断している。

 研究はストリゴラクトンを「植物の地下部でのコミュニケーションツール」「周りの植物と必要以上に競合せず、限られた資源の中で生き延びるための生存戦略の鍵」とみる。グループはそのうえで、植物内でどのように生産が調整されるかを詳細につかむことで、農業の現場で、持続可能な食糧生産の増大につなげることができると位置づけている。

 現在、米カリフォルニア大リバーサイド校客員研究員として「ストリゴラクトンを介した植物のコミュニケーション」の解明に当たる米山さんは、「まずは、植物が未来を予測したり、隣接する植物の存在を把握したりするツールとしてストリゴラクトンをどう利用しているのかを明らかにし、植物がどれだけ賢い生き物なのかを証明したい」と期待を込めている。【松倉展人】

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